大阪桐蔭高等学校女子サッカー部イタリアキャンプ報告書

期日: 平成24年3月6日(火)〜14日(水)

会場:イタリア共和国  ノバーラ

大阪桐蔭高等学校女子サッカー部監督  天野泰男

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まえがき

インテルミラノとペナント交換

大阪桐蔭高等学校女子サッカー部は平成24年3月6日から14日までイタリアキャンプを行った。本校は文化・スポーツコース(V類)として強化クラブがある。野球やラグビー、卓球、ゴルフなど歴史のあるクラブに加え、吹奏楽、男女サッカー、男女バスケットボール、陸上など次々クラブを創設し数年で全国レベルに達している。この所属の生徒は修学旅行に行かない代わりに卓球は中国、ラグビーはオーストラリア、バスケットボールは韓国などクラブ独自の日程で種目に応じた海外キャンプを許可されている。男子サッカーは毎年フランスを訪れ、クレールフォンテーヌでナショナルトレーニングセンターのコーチによるトレーニングや、この2年はモロッコでアフリカサッカーにも触れている。女子サッカーは、創部以来1年生の3月に男子とともにフランスに行っていたが、現在の3年生が8人だったので1年下の学年20人とともに二学年で今年キャンプを行った。

キャンプ地は私が以前勤めていたサッカークラブでイタリア交流の仕事をしていた関係を頼りに、ミラノ近郊の町ノバーラに決めた。町に最低一つはサッカークラブがあるイタリア。このノバーラもセリエAのプロチームがある。日本代表森本貴幸選手が所属し昨年セリエBから昇格を果たしたものの1部リーグの壁は厚く、降格チーム争いに巻き込まれている。

イタリアにおいて地元チームがセリエAに入ることは地域住民の夢である。ユベントス(トリノ)、インテルミラノとACミラン(ともにミラノ)、ASローマ、SSラッツィオ(ローマ)などビッグクラブと同じ土俵で戦うことが誇りである。ノバーラは1908年に設立し1956年にセリエBに降格してから55シーズンぶりに昨年セリエAに悲願の返り咲きを果たした。ノバーラは、最近オーナーの功績もあり素晴らしいスポーツセンター「ノバレッロ」を建設した。天然芝1面、人工芝2面、ミニコート2面、ホテル、ジム、クラブハウスがあり、トップチームから育成まで同じ敷地で練習をしてクラブの一体感がある。

このノバレッロに我々は宿泊し、4回の練習と親善試合を3試合、観光、セリエA観戦などを行った。

イタリア女子サッカー事情

1981年女子イタリア代表が東京でポートピア博覧会(神戸で開催)の関連イベントとして来日し日本代表と試合をして8-0で勝利している。女子サッカーは長い歴史があるにもかかわらず男子サッカーの人気に押されて全く人気がなかった。1997年日本のサッカー指導者を連れてイタリアを訪れた際、女子のセリエAを観戦したが、全国リーグの公式戦にもかかわらずグラウンドは土で数十人の観衆しかいなかった。この時イタリアの指導者に聞いたところ、「イタリアは男のサッカーには興味を持っているが、女子にはみんな関心がないんだ」と言っていた。最近までその傾向は変わらないようだが、昨年ドイツで女子ワールドカップが成功したこともあり徐々に強化に向けて動いているようである。ヨーロッパでは女子強豪国といえば第一に挙げられるのがドイツで、続くのはスウェーデン、デンマーク、ノルウェーなどの北欧に加えてフランス、最近はスペインも強化しているようである。イタリアは女子に関して言えば後進国で、これからということだろう。ただ、今回対戦したインテルミラノ女子チームを筆頭に女子に力を入れるチームが増えていくだろうということだった。インテルミラノは3年前に創設され、そのネームバリューの高さから遠方より選手が集まっている。

人気があまりないといえども、ホテルのテレビではセリエA女子の試合を行っていた。ペイテレビか一般放送かは分からなかったが、週に1度男子と同じように行われるセリエAがこうやって録画ではあるにせよ中継されているのはすごいことだと思った。ちなみに「カルチョ(イタリアではサッカーのことをこう呼ぶ)の国イタリア」ではサッカー番組が空気のように日常放送されている。平日の朝7時でも週末に行われた試合が流れている。それはU-20年代の全国リーグであったり、他国のリーグであったりさまざまだが、日本でサッカーの情報を得ようと思ったら新聞のテレビ欄を見て時間を合わせなければ見られないが、イタリアではチャンネルを変えればどこかでサッカーをやっている。したがって、サッカーに関する情報は日本の比ではなく、当然サッカーに興味があるすべての人々にサッカーの知識が勝手に入ってくる。だからイタリアの子供たちは6歳ぐらいであっても試合の時に両チーム選手がボールに集まって繰り広げられる「団子サッカー」にはならない。サッカーという競技のイメージは生まれた時から注入され続け、彼らの頭にボールに固まるサッカーなんてありえないのである。

インテルミラノ女子チームと一緒に記念撮影

大阪桐蔭は2011年全国高校選手権大会で準優勝した。日本はワールドカップで優勝した。つまり大阪桐蔭女子チームはワールドカップで優勝した国からやってきたトップレベルのチームとみなされた。当初はイタリアナショナルチームとの試合も考えてくれたが、日程の都合で実現しなかった。イタリア人にとってワールドカップで優勝することがどれだけ大変で、偉大なことかわかっているだけに、我々に対するリスペクトは大変なものだった。日本にバルセロナユースが試合に来たようなものだ。インテルミラノとの試合は3ユーロの有料試合になった。ウォーミングアップをする我々を見る観客の視線は釘づけ。いったいどんなプレーをするのか興味津々のまなざしであった。

カルチョの秘密

1996年初めてイタリアを訪ねて6-16歳の少年サッカーを見たとき感じた印象は、「イタリア人はサッカーをよく知っている」と思った。「サッカーを知っている」とはあいまいな表現になるが、試合に勝つとか、駆け引きに長けているということになる。技術的なところを見るとうまい感じには見えない。これも「サッカーがうまい」という定義が日本とイタリアと違うと思うが、日本でディフェンダーを巧みなフェイントで抜いていくプレーがうまいという定義なら、イタリア人は「うまくない」ということになる。ミスも多いし、ドリブルもかたい。フェイントはそんなかけないし、トラップがでかくなる。しかし、ルーズボールに対する読みがよく、日本の中学生チームと対決したときにも必ずフィフティ、フィフティの競り合いボールはイタリアの方にこぼれていた。個人でボールを奪われそうになってもスライディングをしてボールを突っついて仲間に渡してグループでキープするとか、仲間と協力してボールを保持する能力が高い。またシュートのタイミングが非常に速く、良い。あまり持ちすぎて奪われることはない。シュートが非常にうまいわけではないが、シュートのタイミングは正しい。これは、今回対戦した女子チームに対しても同じ印象を持った。

イタリア人コーチが日本の男子中学生のサッカーを見た印象は「技術力は素晴らしい、しかし戦術が乏しい」というものだった。私は女子チームにも同じ印象を持った。これは、やはりイタリアと日本のサッカー情報と経験の差が原因であると思う。経験の差とは公式戦の数の差ということになる。イタリアでは6歳から15歳までほぼ各年代でチームを作っている。つまりこの10年間の間に毎年ホーム&アウェイの能力別リーグ戦に参加している。年代に応じて適切な試合数をこなしている。チームには3-4人の補欠がいるだけで、ほぼ全員が試合に出ている。毎週、毎週ホーム&アウェイで競った試合をして、1年間に平均20試合の拮抗した負けられないゲームを10年間行うと200試合になる。一方日本は小学4年生以下の大会、6年生以下の大会、中学生1年の大会、3年の四つの年代で大きな大会がある。その年代以外は大きな大会はない。しかも、この大会はほとんどがトーナメント形式なため試合数が少ない。1回負けたら終わりといった場合もある。全国大会につながらない試合は緊迫感に欠ける。強豪チームにとっても、1回戦は余裕で勝つ相手だから拮抗したゲームにならない。勝つか負けるかわからない試合をすることで強化されるのに、こういう大差がつく試合はお互いプラスにならない。日本で強豪チームが6歳から15歳まで行う競った試合はおそらく20ゲームぐらいであろう。イタリアは200ゲーム。経験値の差は明らかである。女子にも同じことが言える。

日本はもっと強くなる

この春選抜高校野球で大阪桐蔭が優勝した。体育の授業でこの野球部員の彼らを受け持っているので、彼らがどれだけの運動能力を持っているかわかる。大阪桐蔭の男子サッカーは全国ベスト8の経験があり、ラグビーも全国でベスト8ぐらいの実力である。本校のスポーツ競技は全国レベルであるわけだが、野球部員の運動能力はその中でも突出している。ちなみに彼らはサッカーが非常にうまい。197pの長身投手藤浪君はゴールキーパーとしてフットサルゴールを守っていたが、誰も得点できない。両手を広げると入るコースは全くない。ハンドボールを50m遠投する規格外の藤浪君がもしGKをやったら、ブッフォンを超えるに違いないと確信する。いずれにせよ日本では、運動能力の優れた男子は間違いなく野球を行っている。ヨーロッパではどうか?ヨーロッパで運動能力に秀でた男はサッカーをやっている。だからこそ、日本のサッカーはまだまだ可能性を秘めていることになる。運動能力の最高レベルがまだ集まっているわけではない、さらにヨーロッパや南米に比べ明らかに拮抗したゲームの公式戦数が少ない選手育成環境でもワールドカップベスト16に進出するのだから、これらの環境を改善したらまだまだ上に行ける可能性がある。逆に、その環境を整備しない限り世界のサッカーに追いつくことは不可能で、切磋琢磨の環境が日常で行われているヨーロッパや南米に勝つことなど夢、また夢ということになる。女子は世界での競技人口が少ないためなでしこジャパンは頂点に立つことができたが、ほかの国が本気で強化に取り組めば、世界に離されてしまう危険性を持っている。

親善試合結果

3月8日(木)Ozzzero 19:00キックオフ          70分ゲーム

            大阪桐蔭高校B 1-6前半(0-3)INTERNATIONALE MILAN※96-97  

           20:30キックオフ            80分ゲーム

イタリアでの初戦はインテルミラノとの対戦となった。もちろん青と黒の縦じまユニフォームで胸にはインテルミラノのエンブレムが輝いている。女子チームを設立して3年だが、優秀な選手が集まってきている。イタリアでは年代別のチームとなっている。優秀な選手は上の年代でプレーすることもある。初戦は14歳-15歳年代なので日本でいう中2、中3年代。年代が低いということで、大阪桐蔭はBチームが対戦した。イタリアのチームは事前情報のない相手と対戦するときは非常に警戒する。相手を観察し何ができて、何ができないかを見る。一人一人がそういった認識のもと、注意深くプレーする。優位と思えば大胆に攻めてくるし、不利と思えばますます用心深く戦う。この試合は15分で左サイドの突破からインテルが先制した。さらに20分、33分得点を許し苦しくなった。後半開始早々にも失点し0-4となったところで、ようやく大阪桐蔭もエンジンがかかってきた。後半17分に運天がイタリア初ゴールを決め一矢を報いたが、23分に再び失点し1-4で初勝利はならなかった。

大阪桐蔭高校A 2-0(1-0)INTERNATIONALE MILAN※94-95

※96は生まれた年代。1996年生まれの選手は今年16歳になる年代なので新高校1年生。

 ROMAGNANOのスタッフと小さなサポーターたち

 第2試合インテルミラノは年代が上がり高校3-2年生の年代となった。大阪桐蔭はAチームが対戦した。B戦のゲームを見ているので、少しは準備ができていた。激しい当たりやスピード、シュート力などにどのような対応をすればいいか考えて対戦できた。前半17分右サイド棟安のクロスを中央で濱本が合わせ先制。後半39分には濱本が右サイドの棟安にパスを入れると、そのまま中に持ち込みシュート。一度ゴールキーパーにふさがれるが、はじいたところを詰めて得点を決めた。

3月9日(金) Romagnano 20:00キックオフ40分×2本、35分×1本

            大阪桐蔭高校A 3-2(1-0)         ROMAGNANO

            大阪桐蔭高校B 0-2         ROMAGNANO

 ノバーラから北へ1時間ぐらいバスで走ったところにROMAGNANOという町がある。スイスとの国境になるアルプス山脈がすぐ見える小さな町である。イタリアのどんな小さな町にもサッカークラブがある。ここでも人工芝のグラウンドで6歳から8歳ぐらいの選手が練習をしていた。地域の女子チームがどれくらいのレベルか大変興味があった。練習を見ていると、ちょっと不器用な印象を受けた。でも何人かは攻撃的な選手がいた。

 開始から拮抗したゲームとなった。ROMAGNANOは攻撃的なチームで、早い前へのパスや強引なドリブルでどんどん攻めてきた。前半36分中村から中央の縦パスを濱本が中央で受け相手をかわし得点した。後半に入って3分ROMAGNANOの攻撃が実を結び同点に追いつかれた。お互いチャンスを決められないまま迎えた30分、八雲から中央濱本にいれたボールをうまく押し込み勝ち越し。しかし1分後には再び左サイドを破られ失点し追いつかれた。35分右サイドを上がった長谷川からのクロスボールを井口が頭で決め勝ち越した。

3月12日(月)      Novarello19:30キックオフ   35分×2本

           大阪桐蔭高校B 1-2(1-2)  REAL MEDA

REALMEDAとの試合は好ゲームとなった
 

前半2分にCKから先制された。REALMEDAはあたりが強くプレスが激しいチームだった。大阪桐蔭もこのスピードに慣れてきて対応できるようになってきた。20分山本のパスから麻尾が中央を飛び出しGKの横をうまく抜くシュートで同点に追いついた。後半32分左サイドからの突破から中央で合わせられ失点し、惜しくも敗れた。厳しい当たりにも大阪桐蔭の選手はよく対応し、粘りのあるプレーを見せた。それだけに最後の失点は悔やまれる。

            Novarello20:00キックオフ   40分×2本

            大阪桐蔭高校A 3-0(1-0)  REAL MEDA

 練習で行った中央突破の形が存分に出た試合となった。1試合目より年代が上がったREALMEDAは社会人の選手も交じっているような感じだった。このチームはインテルより強いらしい。パワフルでスピードがある。大阪桐蔭も競り合いでは負けないよう気持ちを持って戦った。前半36分中央突破から中西が抜け出し先制した。後半13分には中村のバックパスを泊がミドルシュートを突き刺し2点目、40分には濱本が左サイドから素晴らしいゴールを決め3-0と圧勝した。

 この試合は面白いことがあった。REAL MEDAはキックオフの1時間前にグラウンドに来ていたが全くアップをする気配がなかった。イタリアでは時々ほとんどアップをしないチームがある。相手チームの監督は1時間前から動いている我々を見て「君たちは小さいが大丈夫かい?」なんてちょっとバカにした様子で声をかけてきた。シモーネコーチは「こんな試合をなめた奴らに負けたらあかん!」と我々を激励した。2試合目大阪桐蔭が圧勝すると試合後相手の監督は「お前らはなんなんだ?どんな体力をしてやがる?時間稼ぎをしようとファールをしてもすぐ起き上がる!倒しても起き上がる、倒しても起き上がる!これじゃピストルでも持ってこないとダメじゃないか?すごい日本のチーム!すごい大阪桐蔭!」と目を丸くしてしゃべりまくって立ち去って行った。これにはシモーネコーチも「してやったり」の表情だった。

セリエA観戦

◇セリエA第27節 ノバーラ対ウディネーゼ 1-0 ノバーラスタディオ・シルビア・ピオラスタジアム

3月11日(日)セリエA第27節ノバーラ対ウディネーゼを観戦した。

地元に愛されるノバーラ。スタジアムは美しい

ここで簡単に各国リーグについて説明する。日本にJリーグがあるように世界のあらゆる国で国内リーグを行っている。日本は3月開始、12月終了のシーズンだが、ヨーロッパの極寒地を除いて8月から9月開始、5月終了のシーズンとなる。真夏は猛暑なのでサッカーをしないというのが考え方である。ヨーロッパは各国20チーム前後の1部リーグ、20チーム前後の2部リーグがあり、ここから下は国の規模によって異なる。イタリアは全国リーグセリエAからセリエC-1、セリエC-2があり、そこから下は日本の「関西」や「関東」にあたる地域リーグがあり、さらに県、市という単位で小さくなっていく。イタリアの各都市でサッカーチームがありその町を代表する強いチームが存在する。財政力が必要だがすべてのチームが成績次第でセリエAに入る可能性を持っているため、どんな小さなチームであっても実力があり、スポンサーがつけば上がっていける。55年前にセリエBに降格したノバーラはやっとの思いで昨年念願のセリエA昇格を果たし、今シーズンから強豪にもまれながら戦っている。セリエBから昇格したチームが1シーズンで降格せずに残留することは本当に難しいことである。だからノバーラは、いくらセリエAに昇格したからと言って、「セリエA優勝」などと言う強がりで、希望的観測による見当違いな目標は持たない。したがって今シーズンの目標は「残留」である。


各国リーグの上位チームは次のシーズン「ヨーロッパチャンピオンズリーグ」に参戦する権利を持つ。上位チームの数は過去の成績や国内リーグの規模により国によって異なる。イタリアの場合は上位3チームである。チャンピオンズリーグに参戦すると、膨大な放映権料がクラブに入るため狙えるチームは何とかして上位に食い込みたいと考える。チャンピオンズリーグは主に水曜日に入るため、各国の強豪と週に2回試合をする時期がでてくる。入場料収入が増えるというメリットもあるが、選手にとっては厳しいスケジュールとなる。これに、各国の勝ち抜き戦のカップ戦、自分の国の代表として戦わなければならないワールドカップや各大陸の大会(ヨーロッパは4年に1回ヨーロッパ選手権を行っている)の予選など、さらにプレッシャーのかかった試合が入る。強豪チームはこのような強行日程を乗り切るため多くの代表選手を抱え、試合ごとに選手を入れ替えるターンオーバー制を取り入れている。5月に行われるヨーロッパチャンピオンズリーグで優勝することはヨーロッパのチームにとって最大の目標であり権威のある称号である。国内リーグを制することはもちろんだが、その強豪が集まる大会での優勝はクラブチームにとって一番の名誉となる。

このヨーロッパチャンピオンズリーグの次の地位にある「ヨーロッパリーグ」も優勝すると2番目の地位とはいえ、偉業と呼ばれる。チャンピオンズリーグ出場の次の上位チームが参加して、木曜日などに行われ5月に決勝が行われる。

ノバーラは現在最下位の20位。(3月11日現在)もちろん下位3チームに入ると来シーズンから降格しセリエBとなる。ウディネーゼは第4位で上位5チーム以内に与えられるヨーロッパリーグ参戦権をかけて負けられないところ。現在日本代表監督アルベルト・ザッケローニが3-4-3システムをもって中堅クラブであるウディネーゼを上位チームに導き、この功績が認められACミランやユベントスなどの監督を引き受けるようになった。ノバーラは日本代表の森本が所属している。監督が成績不振で交代し、森本を認めていた監督に戻ったためこの日もベンチ入りし、後半から投入された。

試合は前半16分先制したノバーラが1点を守りきり、格上相手に勝利しセリエA残留に向けて貴重な勝ち点3を積み上げた。

イタリアクラブ事情
きれいに整備されたノバレッロ。左はクラブ事務所が入る建物。

セリエAのクラブノバーラ所有の「ノバレッロ」はノバーラの中心地から車で15分程度離れたところ、田畑の真ん中にある美しい施設である。観覧席のあるグラウンドが2面、練習用人工芝1面、8人制のサッカーができる程度のグラウンド2面。クラブハウスにはレストラン、バール(喫茶ルーム)、更衣室、充実したマシンを配備したトレーニングルーム、ホテル、オフィスなどを兼ね備えている。もちろんセリエAのクラブだからこそ資金力があってできることだが、イタリアでは小さな町にもサッカークラブがある。インテルミラノと試合をした会場となったOzzeroというクラブ、2試合目に行ったアルプスのふもとにあるRomagnanoは典型的な町のクラブである。

これらのほとんどはクラブハウス、グラウンドなどハード面は市町村が作り、運営をクラブに委託している。原子力発電所を持たず電気でさえも輸入に頼るイタリアであっても、全国津々浦々まで決して明るいとは言えない照明でサッカーの練習をしている。施設は古びたものも多い。しかし、どこのクラブにもカルチョを愛する心がある。自分のクラブを愛している。

試合に行くと必ず更衣室に案内される。女子だけでなく、男子も小さな子供でもチームには一つ更衣室が与えられる。一つのグラウンドには最低4つの更衣室があることになる。ほかのチームと共同で使うことはない。更衣室には必ず暖房が入っている。温水を循環させる日本でも昔の建物にある鉄製のごつごつした暖房だ。たいてい更衣室にはシャワーとトイレがついている。トレーナーが治療をするためのベッドが置いてあるところもある。日本では女子であっても外で着替えるがこの国では、たとえ子供であっても外で着替えることはしない。試合や練習が終わると暖かいシャワーを浴びる。審判には審判専用の小さい部屋が与えられる。つまりこの国ではサッカー選手はカルチャトーレ(サッカー選手)としてリスペクトされ、大人として扱われる。今回大阪桐蔭女子サッカー部の卒業生が帯同審判として同行したが、審判室を使うか尋ねられた。小さな部屋に一人でいるのが怖いのか、いつもチームの更衣室で着替えていたが、審判も常に尊重されている。

クラブにはバールが必ずある。バールとは、喫茶室のことである。試合や練習に来た選手や保護者に軽食を提供したり、コーヒー、ジュース、アイスクリーム、お菓子など売っている。テレビが置いてあったり、チームのトロフィーを置いてあったり、歴代チームの写真が飾られてあったりする。チームの歴史がバールに来れば理解できる。練習後ここに立ち寄って大人と談笑したり、サッカーについて語り合ったり、地域の老人が来て若い選手と話をする光景が見られる。こういうことも含めてサッカー文化なんだと思う。

高級レストランを思わせるノバレッソの食堂。夜中に戻ってきてもあたたかい料理を笑顔で提供してくれた。

クラブは地域のコミュニティゾーンである。スポーツ選手をリスペクトする土壌がある。私が昔いた神戸の町のクラブでは同じように公共のグラウンドを借りていた。サッカー場1面の大きさでソフトボールができるくらい明るい照明がついていた。狭い更衣室2か所はだれも使わない。そこで100人以上が練習するので全員が使えないのだ。更衣室にはシャワーがついてあったが、水しか出ない。ボイラーがついているが管理をするのが面倒なので使えないようにしてある。夜の21時まで使用料金を払っているが21時を過ぎると一斉に電気が消え、すべての施設に施錠されるので20時50分にはグラウンド整備をして着替えて、グラウンドの外に出ないといけない。真っ暗な中で、ひっそり着替えることになる。もし時間が過ぎると管理人は厳しく追い立てる。時間外手当がつかないので、早く帰りたいからだ。「豊かなスポーツ文化の創造」とは、Jリーグが始まってよく使われるフレーズである。もう30年以上の前のことだが、今でも日本のスポーツ施設の現状はこれに似たようなものではないか?

トレーニング内容

このキャンプで4回のトレーニングを行った。トレーニングはイタリア女子U-18代表コーチのシモーネ・ルベッカさん。事前の打ち合わせでトレーニングのテーマは「攻撃」。

すべての練習を記載できないが、概要は次の通り。

日時

時間

内   容

3月8日10-12

0-12

一人ボール1個づつコントロール

12-30

2人のパス出し、受けの練習。受けはチェックの動きを入れる。タイミングが大切。

30-60

4-2-3-1のフォーメーション練習。ボールの動かし方。ポジションの考え方。

60-90

バックをはずして2-3-1で攻撃のイメージを高める練習。

3月9日10-12

0-20

パス&コントロールの練習。星形でボール回し。

20-50

4-2-3-1の守備の練習。ボールの位置の変化に対する全体のポジショニング。

50-80

2-3-1で守備をつけて数的有利な状態での突破の練習。

80-105

シュート練習

3月9日15-17

0-15

センターサークルを使ってパス&コントロールの練習。

15-75

11対11の攻撃と守備の練習

3月12日10-12

0-35

パス&コントロールの練習

35-105

11人の攻撃の練習

全体の練習の流れは、パスの最小単位である2人でパスを出す方と受ける側のタイミングを合わせることから入った。その際受ける側は必ずチェックの動きでマークを外すこと。この動作は習慣化されないといけない。簡単そうでこれがなかなかできない。本当はこういった動きは10歳ぐらいから身に着けていかなければならない。

 イタリアでは3月8日は女性の日。ノバレッロで大阪桐蔭女子スタッフ3人にハートのカプチーノがプレゼントされた。さすがイタリア!

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