闘莉王の凄さ      

2011年11月25日
 闘莉王の凄さ

<名古屋に移籍したある日の取材 2010年3月10日 闘莉王のインタビュー>

クリックすると新しいウィンドウで開きます全試合、楽に勝てればそれにこしたことはない。長いシーズンを考えると、どこかでチームのバランスが崩れ、苦しい展開に追い込まれるときがあると思います。大切なのは、チームとしてそれを乗り越え、一試合でも多く、接戦を勝利に結びつけることです。そのために必要なのが、メンタリティの強さだと思っています。

 優勝するということは、言葉で言うほど簡単ではありません。まず自分たちが目指している攻撃サッカーのストロングポイントをさらに生かすために、アグレッシブな守備から入る必要があります。選手同士が、ピッチの上でもっともっと要求しあうことも重要です。優勝するためには、きつい道を避けて通ることは出来ないと思っています。ただ・・・。それを乗り越え、みんな一丸となって、優勝を成し遂げたとき、その喜びは何倍にもなって返ってくる。それを信じて全力を尽くします。

<約8ヵ月後の 2010年11月20日 名古屋グランパスエイトJリーグ初優勝>

クリックすると新しいウィンドウで開きますピッチにはいなくても、心はひとつだった。右太腿裏肉離れのためメンバーから外れた名古屋グランパスのDF田中マルクス闘莉王はスーツ姿で試合を見守った。刻一刻と迫る優勝の瞬間。試合終了の笛が鳴り響くと、ピッチに飛び出し、一目散にキャプテンでGKの楢崎正剛のもとへ駆け寄り、抱き合った。

「ピッチには立てなかったけど、外の方がドキドキした。最初から優勝できると信じていた。このチームでやれてよかった。監督は本当に素晴らしい人。どうしても監督を男にしたかった」

今季、断固たる決意とともに浦和から名古屋に移籍した。04年から6シーズンを過ごし、06年のリーグ優勝、07年のACL制覇を果たした愛着あるクラブを離れ、新天地での挑戦に踏み切ったのは、すべて優勝のためだった。浦和では、タイトル獲得よりも世代交代など長期的なチームづくりを重視するフィンケ監督と対立。事実上の戦力外通告を受け、契約満了とともに浦和を去った。「一緒に優勝を目指そう」というストイコビッチ監督の言葉に動かされ、入団会見でも「監督を男にしたい」と言った。

クリックすると新しいウィンドウで開きます「結果を中心にして、自分の人生を生きてきた。何が何でも優勝したかった」。有言実行のリーグ制覇は、自分に課した“ノルマ”でもあった。ピッチで戦うことはできなくても、闘莉王は確かにチームの力になっていた。この日もハーフタイムにはロッカールームでチームメイトにアドバイス。後半18分から途中出場し、その3分後に決勝点をアシストしたFW杉本恵太には投入直前、「外に張るだけじゃなくて、外に行ったり中に行ったりしてペースをつかめ」と声をかけた。杉本は「その言葉のおかげで、しっかり整理して試合に入れた。それが、試合に出てすぐにアシストできた要因だと思う」と感謝した。

その存在感は別格だった。楢崎は「闘莉王の存在もデカかった。人には厳しいことも言うけど、自分もやる。プレーは特別で、性格も明るい。闘莉王はいろんな面においてプラスの力ばかりだった。いい守備をしてくれたし、攻撃でも力になっていた。すごく貢献してくれたし、いろんな面で彼がいなかったら(優勝は)危なかったと思う」とまで言う。チームメイトのだれもが認める“MVP”だった。

「優勝するためには闘莉王みたいな選手が必要だった。今日、それが正しかったことが証明されたと思う」。ストイコビッチ監督も手放しで称え、感謝の言葉を口にした。「プレー面の結果だけでなく、ロッカールームでチームメイトを勇気付ける言葉、鼓舞する姿。闘莉王はリーダーとしての資質を持っていた」。ピッチ内外を問わず、その貢献度は計り知れないものがあった。

「みんなが付いてきてくれたから、この結果になった。この仲間とやれたことに感謝したい」。闘莉王にとっては、歓喜というより安堵に近い優勝だったのかもしれない。タイトルという形で責任を果たした“優勝請負人”。「次からは出るつもりでいる」。その視線は早くも、残るリーグ戦、そして天皇杯に向いていた。

Jリーグが始まってから優勝経験がなく、ここ数年良い成績は残してはいるが優勝することはできなかった。このチームには何かが足りない。ストイコビッチ監督も感情豊かで選手時代から熱い男で有名だった。彼だけではこのチームに覇気を伝えきれないとの思いで、浦和を戦力外になった闘莉王を獲得することになった。ストイコビッチの思惑通り、今まで一度も優勝できなかったチームが今年優勝したのだ。誰もが名古屋の初優勝は、今年度新加入した闘莉王の力が大きいと思っているはずだ。確かにプレーは自分勝手に見えるかもしれない。感情的に物事を言っているように感じるかもしれない。時々我を失ったプレーをしているように見える。闘莉王への悪い批判も少なくはない。

しかし、移籍した名古屋での闘莉王の存在感は非常に強く、チームメイトからの信頼も熱く、楢崎やストイコビッチ監督も言うように色々な場面でチームのために貢献し、チームのための責任を果たしていた。

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闘莉王の責任とは?

  • チームメイトを勇気付ける言葉をかける
  • 鼓舞する姿
  • 自分の感情をはっきり出す
  • きつい道を避けない強さ
  • リーダーとしての資質
  • 人には厳しいことも言うけど、自分もやる
  • いろんな面においてプラスの力を持っている
  • 強い勝者のメンタリティを持っている

闘莉王はまずチームが勝つことを常に考えている。勝つために手を抜く選手には厳しく言う。でもその分自分もやり、人一倍動く。自分が試合に出ていなくても、チームが勝つためならチームメイトに思ったことを伝える。こんな責任感を持っている選手がいるチームは必ず強くなれる。チームがダメなときでも心が折れない強いメンタルを持ち合わせることで、辛い事、苦しい道、きつい道を避けずに前へ進める。それでチームがその人を見て、自分もやらなくてはという気持ちを伝染させる。これだけの存在感のある、気持ちの熱い選手が桐蔭にも増えることを願いたい。

自分の心の中にある想い、感情は表に出さないと

いつか自分自身が潰れてしまう 

人に伝える事はかなりの勇気がいる

ぶつかることや苦しむ事もあるだろう

でも その一歩を踏み出すことで自分の新たな道が開ける

大人への道を一歩ずつ自分で切り開いていくしかない                (安田真季)