第14回全日本女子ユース(U-18)サッカー選手権大会  報告書      印刷用pdfはこちら報告書

JOCジュニアオリンピックカップ

第14回全日本女子ユース(U−18)

サッカー選手権大会

報告書

  期  日 : 平成23年1月3日(月)〜8日(土)
会  場 : 熊本県民総合運動公園 サッカー場・ラブビー場・補助競技場
       陸上競技場(KKWING)

大阪桐蔭高等学校女子サッカー部監督 天野泰男

まえがき

大阪桐蔭高等学校女子サッカー部は平成23年1月3日から熊本県熊本市で行われたJOCジュニアオリンピックカップ第14回全日本女子ユース(U−18)サッカー選手権大会に関西第1代表として創部5年目で初出場を果たした。関西からは7月に静岡県磐田市で行われた第19回全日本高等学校女子サッカー選手権大会で初優勝した日ノ本学園高等学校が全国上位枠(優勝と準優勝チーム)で出場した。大阪桐蔭は8月に行われた大阪府大会で2年ぶり2回目の優勝を遂げ、10月に行われた関西地域大会に駒を進めた。関西2府4県代表6チームで行われ昨年優勝の兵庫県、京都府が1回戦シード。大阪桐蔭は1回戦で奈良県代表のディアブロッサ高田FCソフィーゾと対戦、開始から高田FCにプレスをかけ8点を奪い勝利した。続く準決勝は兵庫県代表の宝塚エルバイレLFCに挑み7−1で撃破し決勝に進んだ。決勝は京都府代表の京都精華女子高等学校。開始5分のCKからの得点で勢いにのり4点を奪って初優勝を決めた。

過去大阪桐蔭が関西大会に進んだのは2年前の第12回大会で、決勝まで勝ち進んだものの日ノ本学園に0−3で敗れ涙をのんだ。創部1年目、2年目は大阪府予選で敗退。昨年も大阪府大会で沈んだ。大阪桐蔭にとって常勝日ノ本学園が全国優勝したため関西予選を免除され1番の強豪が不在だったのは幸運だったが、このチャンスを生かして出場したことは評価される。

大会概要

全国9地域の予選を勝ち抜いた13チーム(東北、関東、東海、九州が参加チームの比例により2枠、ほかの地域は1枠)と全日本高等学校女子サッカー選手権優勝と準優勝、地元熊本県から1チームを加えた16チームを4チームのグループに分け1回総当たりリーグの1次ラウンドを行い各グループ1位が決勝ラウンドに進出する。決勝ラウンドは準決勝と決勝、今回は3位決定戦が行われた。1次ラウンドと準決勝のあとに休息日が設けられた。グラウンドは全て天然芝でこの大会に向けて整備されており良いピッチコンディションで試合をすることができた。試合時間は1次ラウンドが80分、決勝ラウンドが90分。

準決勝、決勝は陸上競技場のKKWINGで行われたが、残念ながら1次ラウンドで敗退したため試合を見ることができなかった。

ベスト4に勝ち上がったのはAグループ十文字中学高等学校(関東1/東京)、Bグループ藤枝順心高等学校(東海1/静岡)、Cグループ日テレ・メニーナ(関東2/東京)、Dグループ日ノ本学園高等学校(高校女子1/兵庫)の4チーム。準決勝は藤枝順心1−0十文字、日テレ・メニーナ3−1日ノ本。決勝は日テレ・メニーナ1−0藤枝順心。3位決定戦は日ノ本2−1十文字。(最後のページ大会結果参照)

第8回大会までは都道府県選抜チームと単独チームの両方が出場していたが、第9回大会からは単独チームの大会となったようだ。ベスト4に大阪府選抜が4回、うち準優勝が3回。兵庫県選抜が2回、うち優勝1回となっている。選抜チームでは大阪と兵庫が健闘していた。単独チームになってからはFCヴィトーリアが第9回大会に3位で入賞する以外は、関西チームはなかったが、今回日ノ本学園が3位となった。常盤木学園、神村学園、聖和学園、藤枝順心の高校強豪校に毎年日テレ・メニーナと浦和レッズが絡むという構図となっている。出場枠が少なく地域大会は激戦となっているがこれら高校の強豪常連校となでしこリーグ下部強豪の日テレ・メニーナ、浦和レッズがリードする傾向は今後も続くものと思われる。なお、元日から熊本県サッカー協会の協力により練習会場を提供していただき試合に臨むことができた。ありがとうございました。

上位チームの特徴

 自チームの試合運営で精一杯だったため、多くのチームの試合を見ることができなかった。日ノ本学園、藤枝順心高校や十文字中高校などは残念ながら見ることができなかったので、対戦した2チームの特徴を述べるにとどまる。

日テレ・メニーナ

 大阪桐蔭にとって勝ち上がっていくことを考えれば厳しい対戦相手となった日テレ・メニーナ。しかしチームの経験を高めること、最終的にチャンピオンに輝いたチームと対戦できたことは非常に得るものが多かった。日テレ・メニーナの驚きの一つは、先発メンバーのうち中学2年生が4人、中学3年生が2人、高校1年生が4人、高校3年生が1人という若さ。先発11名の平均年齢15歳、平均身長155.1p、平均体重45.0s。とにかく若くて小柄である。150p以下の選手が4人もいる。試合前に集まっている姿は普通の女の子。失礼を承知で言わせてもらえば小学生に見えるほどである。もう一つの特徴は高い技術に裏打ちされた徹底したパスサッカー。大阪桐蔭は高い位置でプレスをかけ、フィジカル優位を出して自由を奪うことを目指したが、そのプレスをかいくぐりサイドチェンジとカウンターを仕掛けてくる。3度相手コートでミスを誘いシュートチャンスを作ったものの決めきれなかった。もちろんプレッシャーを受けミスをすることもあるが、リスク管理は行われているので、そう簡単には崩れない。プレスにひるんで闇雲に蹴ることはない。状況が厳しく戦術的な判断で守備ラインの選手がロングキックを蹴ることはあっても、基本的にはビルドアップを行う。チームの目的が選手育成と明確なためか、その徹底ぶりには感心させられた。さらにセンターバックのB村松(U-17日本代表)とD土光は読みのよいディフェンダーで、ポジション取りがとてもよい。簡単に1対1で抜かせてもらえない。

 日テレ・メニーナ対常盤木学園との試合は、最も注目されたゲームとなった。ともに1勝で迎えた第2戦。1位抜けなので負けは事実上の敗退を意味する。常盤木学園は7月に行われた高校選手権ではU−17日本代表の斉藤あかねと京川舞をメンバーに入れず挑み決勝で日ノ本学園に敗れたが、今回はフルメンバーがそろい優勝を狙う。常盤木学園の先発11名の平均年齢17.7歳、平均身長162.0p、平均体重56.5s。この体格差がゲームにどのように反映されるのか試合前から楽しみだった。

 開始から日テレ・メニーナの攻撃力が目立つ。常盤木学園は高い位置でプレスをかけることはあまりなく、しっかりポジションを取って奪った後もつなぐタイプ。日テレ・メニーナはパスを細かくつなぎながらチャンスをうかがうが、最終ラインは常盤木学園も強固なためシュートまでなかなか持って行けない。常盤木学園I斉藤あかねはボランチ。H京川舞は2トップの一角を担う。これまで私は3バック以外見たことがなかったが、この試合は4バックだった。パスの精度、一つのパスに対して複数の選手が関わりグループでの攻撃ができていたのは日テレ・メニーナ。常盤木学園はボールを奪ってからの攻撃がやや単調となり、読みのよい日テレ・メニーナの守備陣の網にかかってしまっていた。時間帯によっては常盤木学園が主導権を握る時間もあったが、お互い決定的なチャンスを作れないまま前半を終えた。

 常盤木学園は12月19日第32回全日本女子サッカー選手権で日テレ・ベレーザを0−0PKで破っている。高校生チームが「なでしこリーグチャンピオン」をPKとはいえ破ることは歴史に残る快挙であることは間違いない。当然その下部組織である日テレ・メニーナは常盤木学園に対して恐れもあるし、勝利しようとする意欲は大いにあるはずだった。

 得点は思わぬ形で入った。後半20分。常盤木学園のゴールキックが右サイドに流れ浮き球の処理に戸惑ったところを日テレ・メニーナU−17日本代表FWI田中が奪い中央に向かってドリブル。常盤木学園ボランチが囲みにくるもよいタイミングで交わしペナルティアーク付近でセンターバックが詰め寄る直前にシュートを放ち左隅に決めた。完全な田中の個人による突破であった。あと少し常盤木学園のセンターバックが詰めればボールに当たっていたと思うが、そのわずかなスペースを生かした田中の勝ちであった。常盤木学園はその後同点目指して攻撃するもチャンスを作ることができず敗れた。歓喜する日テレ・メニーナイレブンと保護者サポーター。

 日テレ・メニーナはなぜこのようなサッカーができるのだろう。どんな練習をしているのだろう。見ている人からは感嘆の言葉しか聞こえない。初めて日テレ・メニーナを見た人は、私が25年前によみうりランドで見た「よみうりユース」と同じ感動を得たのではないか。当時高円宮杯もなく、高校選手権の陰にいた最強チーム「よみうりユース」。第13回日本クラブユース選手権優勝チームとなるそのチームの練習試合に私の目は釘付けになった。相手の状況に応じてテンポよくパスをつなぎ、決してスピードを上げすぎず正しい判断が的確に行われていく。ボールを中心にグループで連動し、サッカーのイメージが共有されている。セレクションされた選手で構成されているからではない。ヴェルディという歴史とトップやユース、ベレーザが同じ敷地で練習している環境が彼女たちを育てていると思う。体格で劣る日本人が世界で戦うためには日テレ・メニーナのように判断や駆け引きで対応し、パスとドリブルを有効に使える正しいサッカーを目指さないといけないと感じる。


常盤木学園

 全日本高校選手権準優勝常盤木学園は日テレ・メニーナとの直接対決で敗れ5年連続ベスト4入りを逃した。日テレ・メニーナ戦は4バックで対応した。I斉藤あかねをボランチに置いていた。彼女はこの年代の代表でフィジカルが強く得点能力が高いがボランチという新しいポジションに挑戦していた。左サイドJ仲田は俊足サイドウインガー。得点能力もあるU−17代表。FWにはH京川を置き得点を狙う。12月の全日本選手権でPKの末日テレ・ベレーザを破ったことはこのチームの能力の高さを証明している。ボランチ能力が高くリスク管理が優れているチームだが、自らのゴールキックから田中に痛恨のゴールを許した場面では修正しきれなかったのだろう。全日本女子選手権と全日本ユース(U-18)、時期を同じくして行われる大会で両方結果を求めるのは酷だったかもしれない。チャレンジリーグEASTで優勝したことも自信になっていたのには違いないが、3年生が引退する最期の大会でピーキングを持ってこられなかったような気がする。それでも常に新しいことに挑戦し、結果を出している常盤木学園は高校サッカーのリーダーである。

 1次ラウンドの日テレ・メニーナ戦は決勝戦と言われても不思議ではない試合だったが、日テレ・ベレーザを破った常盤木学園に対するメニーナのモチベーションは異常に高かったように思える。日テレ・メニーナに比べて、1つのパスに対するパスを受ける選手以外の選手のサポート角度、距離、おとりの動きが不足していたように見えた。攻撃のリズムも単調になり、日テレ・メニーナの守備網に引っかかっていた。とは言っても、大阪桐蔭戦では3年生を外した「新チーム」で2バックという驚異のシステムを試し、3失点したものの1-3から残り15分で3点を挙げる爆発力は健在だった。本気になった常盤木学園を止められる力は大阪桐蔭にはなかった。

大阪桐蔭高等学校の戦い

◇1次ラウンド第1戦(1月3日、サッカー場 11:45キックオフ)

大阪桐蔭高等学校0-1(0-1)日テレ・メニーナ(関東第2代表/東京)  

失点24分日テレ・メニーナ鳥海

我々は大会ベスト4を目標に挑んだ。組み合わせが決まる前にベスト4を目標に立てたが、死のグループに入ってしまった。過去5年ですべてベスト4入りしている日テレ・メニーナ。過去4年優勝3回、準優勝1回の常盤木学園と同じグループは、初出場の大阪桐蔭にとって厳しいものであった。初出場の洗礼を受けた形となったが、せっかく全国に出場できたのだから強豪チームとやれることをプラスに考えどうすればベスト4に進出できるかを考えた。グループ1位にならないと決勝トーナメント進出はない。混戦となっても1試合の負けは許されない。初戦の日テレ・メニーナ戦は最低引き分けなくてはならなかった。8月に藤枝順心高校に招待されたときにこのチームと対戦した。結果は0−6で完敗。大阪桐蔭は国体組が抜けていたとはいえ、レベルの高さを痛感した。大阪桐蔭の長所を生かし相手のいやがることを考えたら、相手コートでプレスをかけ自由を奪い相手の守備陣が整わないうちにシュートまで持って行くことが最良と考えた。

大阪桐蔭はキックオフからプレスをかけた。クラブチームは伝統的に初戦に弱い。これは私がクラブチームを指導していた経験からわかる。調子を上げる前に攻め込まないとチャンスはない。立ち上がり日テレ・メニーナ守備陣は明らかに混乱していた。フィジカルでは優位なので粘り強く組織を作りながらプレスをかけた。前半20分ビックチャンスが訪れた。日テレ・メニーナ守備ラインの組み立てにプレスをかけセンターバックがトラップミスしたところを濱本がボールを奪った。場所はペナルティアーク付近ゴールに向かってやや左の位置。狙い澄ましてインサイドで強く蹴ったボールは左ポストに当たってゴールをそれた。その時間帯にはチャンスも作れたが、高い守備ラインをつかれ何度かカウンターを受けていた。何かをとれば何かが不足するのがサッカー。1回目のカウンターはキーパー森の警告と引き替えに止めたが、日テレ・メニーナI田中の絶妙な飛び出しとそれにあわせるパスの精度が正確すぎて対応できない。ついに24分中央でのグループによるボールキープミスからボールを失い左サイドに展開される。日テレ・メニーナの特徴はFWのようにあがってくるサイドバック左利きE小林と、右サイドのM清水だ。かなりこれを警戒したのだが、このときは攻撃にかかっていたので左サイドハーフ赤坂の対応が遅れた。フリーで右サイドを受けたM清水は中央に正確なクロスをあげ、147pのFWP鳥海が頭であわせた。鳥海は全日本女子サッカー選手権2回戦の大阪体育大学戦でも頭で得点を決めている空間認知力に優れた俊足FWだ。試合前は選手たちには1点を失っても驚かないように言っていた。日本の最高レベルのチームに失点しても不思議ではないからだ。しかし前半での失点は難しい選択を余儀なくされる。攻撃的に戦って同点を目指すのか、最少失点で後半を迎え最後の15分で勝負をかけるのか。この相手に2点差を逆転することは難しい。

チームは1点を失ってもやり方を変えなかった。選手の動きは良かったからだ。それまでと同じように前からプレスをかけ、カウンターを警戒しながらも、あるいは実際にカウンターを受けながらも守護神GK森とセンターバックキャプテン松井のがんばりで耐えた。後半も開始からプレスをかけ、2度ビックチャンスをつかんだ。1回は左サイド攻撃ゾーンでプレスからボールを奪い松川が中央に送りDF裏にうまく走り込んだ濱本にあわせた。不運にもシュートはGK正面でキャッチされた。さらに濱本がボールを奪ってループシュートを放ったが惜しくもバーの上を越えた。GKが前に出ていたので、枠にとばすと得点となっていたはずだ。

攻撃の姿勢を崩さず、プレスをかけたが敗れた。全員が守備の意識を高く持って戦った。守備は95点の出来だった。守備の組織力は高いレベルだったと思う。しかし日テレ・メニーナとの差は攻撃力で現れた。相手のボールを奪ってからのパス技術、これは単に個人技術ではなくボールに関わるグループのポジション、距離、角度の問題も関わる。日テレ・メニーナはそこでのミスが遙かに少ない。判断も適切で有効だ。大阪桐蔭は無駄や誤りがある。そこで再び奪われてしまう。守備はある程度トレーニングによって改善される。もちろん攻撃も改善されるが、組み立てるという作業のため相手を破壊する作業より精度が求められる。1点差という最小得点差のゲームをやったのは事実である。優勝したチームに健闘したともいえる。しかし、このレベルのチームを破るためにはさらにレベルアップしなければならない。それは数ヶ月や、数週間でできるものではなく、日々の練習の積み重ねである。

◇1次ラウンド第2戦(1月4日、補助競技場 14:00キックオフ)

大阪桐蔭高等学校5-1(3-1)柳ヶ浦高校(九州代表/大分県)

得失点 7分大阪桐蔭金井、8分柳ヶ浦倉員、31分大阪桐蔭金井、40+1分大阪桐蔭金井、45分大阪桐蔭金井、64分大阪桐蔭松井

第1戦で常盤木学園に0-10と大敗した柳ヶ浦との対戦は相手チームの能力分析が出来ないままの対戦となった。常盤木学園の攻撃力が強すぎて柳ヶ浦の攻撃力を分析できなかったのである。大阪桐蔭の幸先は良かった。7分コーナーキックからのこぼれ球を金井がオーバーヘッドで決め先制した。この前の試合で日テレ・メニーナが常盤木学園を破っていたので、実質我々の1位抜けの可能性がなくなっていた。柳ヶ浦には失礼だが、日テレが柳ヶ浦に敗れるとは思えなかった。ただ柳ヶ浦を過小評価していた。対戦してわかったことだが、B船原とG倉員(くらかず)の2トップが非常に速かった。高校選手権九州大会で神村学園と接戦を演じただけあり大阪桐蔭守備陣がスピードで破られる場面が多く見られた。8分にG倉員に同点に追いつかれ試合はわからなくなった。柳ヶ浦もこの1点で硬さがとれていいプレーが出始めた。大阪桐蔭はポゼッションを高めるものの奪われた後の速攻に悩まされたが31分再び右フリーキックのチャンスから金井が押し込みリード。前半ロスタイムにも中央から金井が入れて2点差とした。後半5分に金井が4点目をたたき出し、24分にはキャプテン松井が左コーナーキックを直接決めて試合を決定づけた。

結果的には大差となったが、内容的にはそれほど差があるわけではなかった。前半終了間際、後半開始に得点できたことが大きい。うれしい初勝利となった。

◇1次ラウンド第3戦(1月5日、ラグビー場 14:00キックオフ)

大阪桐蔭高等学校3-4(1-2)常盤木学園高等学校(高校2位/宮城県)

得失点 2分常盤木学園京川、27分大阪桐蔭濱本、33分大阪桐蔭濱本、47分大阪桐蔭濱本、64分常盤木学園仲田、67分常盤木学園堀井、72分常盤木学園二宮

 7月の高校選手権準々決勝以来の対決となった。両チームとも1敗で迎えたため準決勝進出の可能性はほぼない状態での対戦となった。常盤木学園は3年生を抜いたメンバー。早くも来年度を見据えている。大阪桐蔭は1、2戦と同じ先発メンバーで対戦した。この大会のテーマ「ジャイアントキリング(格上相手を倒す)」が達成されないまま3年生が引退することは出来ないと、意気込んで挑んだ試合だった。開始2分いきなりH京川に中央を破られ失点した。強い相手に先取点を与えることは「ジャイアントキリング」どころか大敗パターンである。しかしこれでリズムを崩したのは常盤木学園の方だった。システムは2-5-3。センターハーフが下がる場面はあるものの2バックである。先発メンバー表のDFは2人しか登録していなかったが、普通メンバー表と実際のシステムは異なる場合が多い。ところが本当に2バックできたから驚きである。しかし、中盤に人数をかけるぶん、最終ラインでスペースが出来ることになる。特に3バックでも両サイドバックのうしろはスペースが出来るのに、2バックになればなおさらである。この負担は常盤木学園両サイドハーフの2人にかかることになる。大阪桐蔭はこの両サイドの攻撃を生かし、27分左サイド赤坂の突破とシュートから濱本が得点、さらに33分にも濱本が追加点を挙げ逆転に成功した。後半に入っても常盤木学園のサイドの混乱は修正されず、7分右サイド吉田の突破から濱本がハットトリックとなる決定的な3点目が入る。

前半の先取点でリズムを崩したのは常盤木学園なら、予想外の3得点で調子を崩したのは大阪桐蔭だった。勝利を意識したのか後半20分過ぎから消極的になってしまった。それと同時に常盤木学園は猛攻に出てきた。FW3人と中盤の5人がプレスをかけてきた。中央でミスをすると餌食になる。守備の乱れが出て1点差に追いつかれてから逆転されるまであっという間であった。常盤木学園に勝利するという淡い夢が一瞬にして崩れ去った。

ゴールキーパー


 大阪桐蔭のゴールキーパー(以下GK)は3年生の森(159.0p)が3試合先発場した。3年生の秦(161.0p)は柳ヶ浦戦の後半10分で交代し出場した。日テレ・メニーナのGKは高校1年生の望月(171.0p)、柳ヶ浦のGKは児玉(167.0p)、常盤木学園のGK林崎(167.0p)であった。森は中学年代所属の鳴門ポラリスではレギュラーではなかったが、高校3年生になってから頭角を現した。身長のハンディを判断とポジショニングでカバーしピンチを防いだ。特にメニーナ戦では高い守備ラインの後方をカバーする働きで安定した守備を形成した。オフサイドぎりぎりを飛び出してくるFWに対しても、的確な判断で対応した。今後の課題としてクロスに対する積極性をつけていけばよいと思う。日テレ・メニーナ戦の失点場面で思い切って飛び出してパンチをすることができたら、さらに守備範囲の広いキーパーと成長するだろう。これらの成果はGK担当の安田コーチが毎日1時間専門のトレーニングを行ってきた成果だと思う。GKコーチがチームにいることは非常に心強い。

コンディショニング

 選手の体調管理はこの時期難しい。年末年始で普段と異なる生活となる上、寒さで体調を崩す、インフルエンザに感染するなど心配事が山ほどある。さらにけがは試合出場機会を奪う。けがをしないようにするためには練習を行わないのがよいが、試合前にそうはいかない。この大会は日頃選手の体調管理を見てもらっている平沢トレーナーチームから平沢チーフと棚原トレーナーが帯同してもらった。彼らは年間を通じ週1回グラウンドに来て各選手の診断と治療を行い、週末の公式試合時に帯同してもらっている。受傷時の治療はもちろん、回復までのリハビリメニューの作成、年間を通じてのけがの発症集計と分析など様々な取り組みを行っている。私はこれらのデータを元にトレーニング強度を調整し、けがの無いようにトレーニングを考えている。日頃接しているトレーナーは選手にとって安心感があるし、トレーナーは選手の身体特徴から性格まで熟知しているので対処法に誤りがない。年末の試合で筋系の故障を抱えた選手や、試合の2日前の練習で肉離れを起こした選手がいたが献身的な治療で試合に出場することができた。またGKの森は日テレ・メニーナ戦で相手選手と衝突し大腿部打撲を負い痛みを伴ったが、受傷後の処置と夜の治療でその後の試合に出場することができた。

 これら高度なコンディショニングに関する知識は我々サッカーコーチでは到底かなわない専門的な分野である。実は私も遠征中疲労がたまり発熱したが、平沢チーフの灸とマッサージのおかげにより一晩で回復した。

まとめ

 初めてこの全国大会に出場し、チームとして得るものが多かった。初出場は様々な困難を与えられるものである。ベスト4を目標に、組み合わせが決まってからはジャイアントキリングを合い言葉に挑んだがまだまだ力が足りないことを教えてくれたし、組み合わせを見て「死のグループ」に驚いたものの強豪チームと真剣な戦いができた。3年生はチームのために仲間作りに力を注いだ。キャプテンや副キャプテン、学年のリーダーを中心に40人がどうすれば一丸になれるかを考えてくれた。一人一人は何がチームの役割なのかを考え、チームに貢献しようとした。その力がもっと出せればベスト4に進出したかもしれないし、もっと早く気づけばよかったという思いもあるだろう。

 優勝した日テレ・メニーナに最小得点差で敗れ、常盤木学園にも3点を入れたのだから全国のトップレベルの部屋を覗いたぐらいまで来たという気もある。初めて全国高校選手権に出場したときは優勝した鳳凰高校に0−6で完敗し、まったく手も足も出なかったことを考えると成長したと思う。しかしサッカーの世界は常に進歩し停滞すればすぐ引き離される。今は全国に近づいたかもしれないが、将来の保証などどこにもない。

それでも我々に有利な傾向も見られる。関西サッカー界はこのところ全国で高いレベルにあるということだ。今年度は日ノ本学園(兵庫)が高校選手権で全国制覇し、この大会でも3位に入っている。武庫川女子大学(兵庫)は大学選手権でベスト4に入った。なでしこリーグのINAC(兵庫)は女子選手権で優勝し、澤選手など日本代表選手が多く加入する。もしかしたら練習試合ができるかもしれない。男子も負けていない。滝川第二高校(兵庫)は高校選手権で初優勝、関西大学(大阪)は大学選手権優勝。高円宮杯U-15では京都サンガ(京都)が準優勝、ヴィッセル神戸(兵庫)がベスト4入り。全日本少年サッカー大会ではEXE‘90(大阪)が準優勝、高田FC(奈良)が3位。関西のチームはあらゆるカテゴリーで上位に入っているだ。堺ナショナルトレーニングセンター(愛称:Jグリーン)が完成しあらゆるカテゴリーの高いレベルの試合やトレーニングを見ることが出来る。このような高いレベルのところ環境はチームにプラスに作用する。お互いの切磋琢磨ができるからである。



日本サッカー協会ホームページより抜粋。

全日本女子ユース(U−18)サッカー選手権大会歴代優勝他(大会プログラムより抜粋)

年(西暦)

平成年度

1位

2位

3位

3位

第1回

1997

9

埼玉県選抜

静岡県選抜

聖和学園

兵庫県選抜

第2回

1998

10

湘南女子高校

大阪府選抜

聖和学園

愛知県選抜

第3回

1999

11

NTVメニーナ

静岡県選抜

聖和学園

大阪府選抜

第4回

2000

12

兵庫県選抜

栃木県選抜

福岡県選抜

鹿児島県選抜

第5回

2001

13

東京都選抜

宮城県選抜

鹿児島県選抜

静岡県選抜

第6回

2002

14

東京都選抜

静岡県選抜

鹿児島県選抜

福岡県選抜

第7回

2003

15

静岡県選抜

大阪府選抜

東京都選抜

神奈川県選抜

第8回

2004

16

静岡県選抜

大阪府選抜

東京都選抜

宮城県選抜

第9回

2005

17

日テレ・メニーナ

神村学園

聖和学園

FCヴィトーリア

第10回

2006

18

常盤木学園

神村学園

藤枝順心

日テレ・メニーナ

第11回

2007

19

常盤木学園

日テレ・メニーナ

浦和レッズ

神村学園

第12回

2008

20

常盤木学園

浦和レッズ

藤枝順心

日テレ・メニーナ

第13回

2009

21

浦和レッズ

常盤木学園

日テレ・メニーナ

藤枝順心

年(西暦)

平成年度

1位

2位

3位

4位

第14回

2010

22

日テレ・メニーナ

藤枝順心

日ノ本学園

十文字中学高校